vol.23「多国籍なキタ号」(2023.11)

つひまぶ23号、11月号が完成しました。
今号は「多国籍なキタ」号です。

インバウンドが復活して多くの外国人を見かけるようになりましたが、もともとキタは大阪の玄関口。ターミナルです。外から多くの人がやって来る場所なのです。外国人だって、インバウンド隆盛の今日よりもはるか以前から、たくさんいました。多国籍を感じることのできる場所もたくさんあります。
多様性が叫ばれている今だからこそ、多国籍なキタを見つめてみました。

表紙の写真は、JR大阪駅中央口、大丸梅田店の入り口付近に設置されたでっかいレリーフの一部。横長のレリーフには中央に大阪城や「曽根崎心中」のお初と徳兵衛の姿が刻まれ、両サイドには左からサンクトペテルブルグ、メルボルン、上海、サンフランシスコ、サンパウロ、ミラノなどの都市を象徴するモチーフが刻まれています。カンガルーとかゴールデンゲートブリッジとか。これらの都市は大阪市と姉妹・友好都市提携を結んでいる都市で、このレリーフこそは多国籍なキタを象徴するレリーフなのです。ところが、韓国の慰安婦像設置をめぐってサンフランシスコと姉妹・友好都市提携を解消したもんだから、タイトルプレートの「世界に開く大阪」が外され、なんやよう分からん作品になってます。が、これこそが表紙にふさわしい、多国籍なキタ。民や草は仲ようやればいいんです

最初に紹介するのは、中崎町。前進・進化・発展あるのみの梅田のようなメガロポリスに隣接する場所に位置しながら、レトロでスローで時間が止まったような中崎町には、梅田にはない魅力に引かれて、こちらもまた世界中から人が集まっています。そんなわけで、今でこそ国内外のオサレさんがやって来る中崎町だけど、もともと外国人がそれなりに活躍していたまちでもあるのです。これ、案外見過ごされがち。外語専門学校の山口学園には「ECC社会貢献・国際交流センター」のセクションがあり、留学生をはじめとする学生たちが、地域の活動に積極的にかかわってくれています。ほか、古民家カフェのさきがけでもある「Salon de AManTo 天人」では難民支援をおこなっていて、このまちには難民(申請中)の人たちも暮らしている。
そんな中崎町で暮らす外国人たちを描いたのが、リム・カーワイが監督した映画「カム・アンド・ゴー」。中崎町に暮らす在日外国人たちの群像劇です。
外国人が暮らすという視点で見つめた中崎町を、まずはご覧あれ。

中崎町に暮らす外国人が「A面の中崎町」なら、こちらは「B面の中崎町」。
中崎町にはかつて、イトマン事件で世間を騒がせた戦後最大のフィクサー・許永中が邸宅を構えていました。この中崎町にコリアンタウンを建設することを夢見、許永中神社と呼ばれた「ひがし茶屋町西向不動尊」まで建立したことを知る人は、今となっては少ないです。今日ではすべてが撤去され、痕跡を探すことすら難しくなっているから。
この地にある「大阪韓国文化院」ともに、闇社会の帝王・許永中がいた痕跡を追ってみました。

次は、西天満。古いまちだし、旧町名の継承碑もたくさん見つけることができるエリアですが、同時に、外国料理のレストランもたくさんあり、なかでも珍しい外国料理のレストランもいくつかあります。そんな新旧が混在するエリアを、過去と現在を行ったり来たりのぶらりまち歩きで、極私的エリアガイドをつくってみました。
アラブ料理とかミャンマー料理のお店とかありますよ&旧町名がたくさんあって楽しいです。

そして、キタといえばエンタメ。音楽面からも多国籍な切り口を探りました。
アイリッシュ音楽の超難解楽器イーリアン・パイプスを操る金子鉄心さんに突撃取材。今から13年前に子育てプラザが主催したコンサートを手がかりに、鉄心さんに辿り着きました。鉄心さんは元々はおかげ様ブラザーズのサックス奏者としてメジャーシーンで活躍された方。そんな方がなぜにアイリッシュ音楽に? キャリアそのものが世界音楽紀行のような方のキャリアを俯瞰するインタビューをどうぞ。
大阪大学中之島芸術センターでおこなわれている、ダルマ・ブダヤのガムラン体験教室の体験ルポも。ガムランの演奏、本格的にやりたくなりました!

さて、メガロポリスには各国の大使館や領事館が置かれているものです。商都・大阪は、じつは領事館がめちゃくちゃ多い。それもキタにかなりの数が集中しています。なかには名誉領事館なんてものもあります。名誉ってなに? いや、そもそも大使館と領事館って、なにが違うんでしょうか? 領事館ってなにをするところ? そして名誉領事館とは?
そんな超初心者的質問をぶつけに、在大阪カンボディア王国名誉領事館、在大阪メキシコ合衆国名誉領事館、在大阪・神戸米国総領事館にお話を聞きに行ってきました。どの国の在大阪公館にも、個別の経緯があり、とても興味深い記事ができあがりました。

表紙の大阪駅のレリーフにはじまり、特集の最後も大阪駅を。大阪駅に設けられた祈祷室を紹介しています。イスラム教徒は1日5回お祈りをしますが、そんな方のために、大阪駅には祈祷室が設けられているのです。駅構内に限定すると、全国でもここだけ。
使用目的は祈祷だけですが、イスラム教徒にかぎらず、どんな人でも利用できます。まだまだ知られていない施設なので、この特集で紹介してみました。

コラム「キタの手みやげ」は、天満の水を使った天満のクラフトビール「天満天神エール」を。この夏にお目見えして、話題になりました。天満宮のご神水、昆布商が盛んだった天満ならではの昆布だし、ヒョウ柄のおばちゃんと天神祭が描かれた絵本作家・長谷川義史作のラベルと天満エッセンスがこれでもか詰め込まれた天満のクラフトビールのお味はいかに?

大阪天満宮の表大門脇に、巨大なイラスト案内図があるのをご存じですか? 石柱の柵に隠れて見にくいのだけれども、見応えたっぷりのイラスト境内案内図があるんです。この地図、誰がどんな経緯でつくられたのか。すぐに分かると思っていたところ、真相にたどり着くまでには意外と難航し、その過程でいろんなことが分かってきました。地域の活性化に関心を寄せられた方がかかわっていたことが判明し、興味深い経緯を知ることができました。

「彼女とキタのラブストーリー」は、天神祭を研究しているルーマニア人の文化人類学者にして兵庫県立大学国際商経学部教授のタマシ・カルメンさんを。ルーマニア人の彼女がなぜ日本に来、大阪に来、天神祭を研究するにいたったのか。さらにこの11月には天神祭をルーマニアに持っていく計画まで語っていただきました。とても興味深いストーリーになっています。

最終ページには、ちょっと珍しい外国料理が食べられる「珍しい外国料理のレストラン」リストを。領事館リストと併せて、お使いくださいませ。

と、今号も盛りだくさんとなっております。
配架してあるのは、HP内「手に入るところ」を
https://tsuhimabu.com/?page_id=70

contents

特集「多国籍なキタ」
『元来、マレビトがたくさんいたまち』(中崎町のもう1つの顔)
『20世紀末、バブルに踊ったツワモノどもが見た夢は』(B面の中崎町物語・許永中)
『旧町名とレアな外国レストランが交錯するワンダーゾーン・西天満』西天満一丁目〜六丁目極私的ガイドブック
『おかげ様ブラザーズのサックス奏者からアイリッシュ音楽へ。金子鉄心さんの旅は続く』今やレジェンド・パイパーの金子鉄心さんに聞く、世界音楽紀行のようなキャリア
『領事館って、どんなところですか?』アメリカ、カンボジア、メキシコ…、キタには領事館がいっぱい。そもそも、領事館は何をするところ?から聞いてきました。
『JR大阪駅の祈祷室』が、あるのをご存じですか? 利用方法など聞いてきました。
『キタの外国料理レストラン(珍しい国限定)』『キタの領事館』リスト

・キタのええもん キタの手みやげ – 天満の水を使った天満の地ビール誕生『天満天神えーる』
・北区マップ考現学 – 天満宮の表大門脇にある巨大イラスト案内図のできた経緯は?
・彼女とキタのラブストーリー(第22回) – 兵庫県立大学 学長特別補佐・国際商経学部教授 タマシ・カルメンさん

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https://tsuhimabu.com/pdf/tsuhimabu_202311.pdf

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